視察報告|茨城県竜ケ崎市・有限会社横田農場

農業活性化調査特別委員会の一員として、茨城県竜ケ崎市で150ヘクタールもの規模で水稲の栽培・加工を行っている有限会社横田農場様でお話を伺ってきました。

有限会社横田農場様は、社員数は役員2名、社員9名で、水稲の生産販売 加工品の製造販売を行っています。作付面積は150ヘクタール。作業受託も10ヘクタール行っています。

社員のうち3名が精米と加工部門に従事し、水稲生産は役員2名を含め8名で行われています。

法人設立の経緯は、現在の代表取締役横田修一さんが大学を卒業し就農するタイミングで父母が有限会社を立ち上げたそうです。通年雇用による稲作の専門家の育成、相続対策や米の直売・加工品販売などを展開するには法人形態が望ましいとの判断で、1996年に法人化したとのこと。

自宅付近の農地(2.5キロメートル四方)に圃場が集中しており栽培効率が高いのが特徴です。このエリアであれば受託するという消極的な規模拡大の方針で行っているものの、毎年のように10ヘクタール程度ずつ受託面積が増えているそうです。

最大の特徴は徹底したコスト削減。この大規模にもかかわらず田植機は8条植1台、コンバインは6条刈1台。これを可能にするため、8品種作付けという作期分散と、集中している農地の畔抜きによる圃場枚数の増加抑制に取り組んでいます。そのため毎年のように作付け面積は増加しているものの、この10年近く生産部門人数は8名以内で担っています。

機械設備の投資の抑制と人件費の抑制に加えて、資材費の抑制にもしっかりとした考えのもと行っています。土づくりとして施用しているもみがら堆肥は、酪農家にもみ殻を提供し、物々交換で堆肥を調達。作業軽減のため新潟で普及している一発肥料は使用しない。肥料や農薬はJAや取扱業者の見積り合わせで購入先を総合的に判断しているそうです。

さらに、販売面において、この大規模な農場で生産されるコメのほとんどを直売しています。一般消費者への販売だけでなく、インターネットでの販売、8店舗のスーパーでの販売、レストランや弁当業者への業務用米の提供、日本酒や米菓業者への加工用米の提供と多品種を多業者に販売し販売価格の安定とリスク分散にも取り組んでいます。

組織マネジメントとして、管理者の作業指示により動くという組織ではなく、自ら考えて行動する技術者、お互いが連携して効率を最大化する技術者集団(農村部で昔あった結(ゆい)のようなイメージ)を掲げています。

加工品の製造販売は主として代表の奥様が担当されていたそうですが、現在は米粉スイーツなどの製造は外部委託し、販売に力点を置いた戦略で行っているとのこと。米粉スイーツを通じて横田農場を知っていただき、食用米の販売につなげていくという間口を広げる戦略として米粉スイーツ販売が位置付けられています。

地域企業として、毎年地域の子供たちなどに田植え体験や稲刈り体験などの農業体験(田んぼの学校)にも取り組み、すでに延べ1万人の実績となっているそうです。

今後の展望・課題としては、自宅付近の2.5キロメートル四方の農地経営受託は今後も進むことが見込れる事から、消極的規模拡大は今後も続け、限られてエリアではあるが担い手としての役割を果たしていく計画。

ただ、これ以上の経営規模拡大は現状の人員と機械設備では限界にきていることを考えると、経営効率という面ではマイナスに転じることも想定されていらっしゃいます。

より効率の良い作業、経営に知恵を絞って、一人当たり50ヘクタール(現在20ヘクタール)という数字を目標に頑張りたいとお話されました。

 

◆◆◆視察を終えて◆◆◆

雪の降らない茨城県と新潟では単純比較はできないところもありますが、徹底したコスト削減の工夫は学ぶべき点が多いと思います。

まずは機械設備の徹底した効率的な利用。横田農場と同等規模の農業法人は新潟市にはありませんが、100ヘクタール前後の法人は数社あります。そこでは、田植え機・コンバイン台数はいずれもかなり多く(耕作面積比3倍から4倍)、横田農場が田植えで2か月、稲刈りで2か月かけているところを新潟では、田植えは長くて1ケ月、稲刈りも長くても1月半くらいで終了させています。

通年雇用ということで時間をかけても機械を効率よく利用するという考え方と、臨時雇用で作業を短期集中で終え人件費抑制するという考え方、どちらが経営上優位かは精査してみる価値があるのではないでしょうか。

横田農場の農地集積の考え方はまさに人・農地プランで各地で議論されている理想的な形です。圃場の分散を可能な限り抑えることで移動時間を節約し効率的な作業を行う。農地の集約は集落での話し合いでも総論賛成までは進むものの、具体的な話に進む段階でとん挫する傾向があります。

横田農場の効率的な経営を理解するならば、先祖伝来の農地の耕作にだわるという考え方の意識改革を粘り強く訴えていくことが重要ではないかと感じました。

新潟市の農家が頭を悩ますもみ柄の処分。水田に散布して稲わらとともに圃場にすき込むという方法がありますが、実施されている面積は限定的です。

養豚農家に引き取ってもらうものもありますが、量は限定的

野焼き禁止という事は承知していても、毎年のように農地にまとめて廃棄したもみ殻を焼却する光景を目にします。

米プラス園芸、園芸産地をつくる、増やすという今後の施策にあわせてもみ殻たい肥センターを市内各所に設置することができれば、稲作にも園芸作物にも利用でき、新潟の農産物のイメージアップにもつながるのではないでしょうか。

横田農場のように現物を提供して物々交換でもみ殻堆肥を調達とはいかなくても、大量のもみ殻という資源を活用するたい肥センターのようなものができないものでしょうか。

徹底したコスト削減の取り組み事例を拝見し、まだまだ新潟の稲作においては工夫の余地があるということを強く感じました。